空き巣すら盗まなかった僕のボロボロの財布

物持ちがいいと昔から僕は自負している。妻からすればケチなだけなのよ、ということらしいけれど、とにかく僕は物を買い替えない。靴下に穴が開いても捨てたりなんかしない。その日家を出る用事がなければそれを履いて一日過ごすし、穴が開いていると却って通気性がいいので蒸れないから足にも優しい。靴下が靴下の機能を果たしている限り、僕は使い続けたいと思っている。その前に妻が勝手に捨ててしまうけれど。

僕の財布なんて、高校生のときからずっと使い続けているものだ。人工革はボロボロだし、財布自体もしなっているけれど、カードを入れやすいし、小銭入れのところもいい具合にふんわりと開くので、細かいお金を出しやすいというメリットがある。だけど妻は、みっともないのでお願いだから買い替えてと僕に懇願してくる。財布の寿命は3年だから、あまり古い財布を使っていると金運が無くなるのよ、と脅してくるけど、それはきっと財布を売っているどこかのブランド会社の誰かが、3年で買い替えさせるために流したデマだと僕は思っている。とにかく財布が財布の機能を果たしている限り、僕は今の財布を使い続けるつもりだ。

そんな僕の考え方が功を奏した事件が起きた。数年前に空き巣にあってしまったのだが、妻の財布や宝石類などが盗まれてしまったにも関わらず、置きっぱなしだった僕の財布はそのままの状態で残っていたのだった。ボロボロすぎて、空き巣も財布と認識できなかったらしい。空き巣被害にあったことは正直ダメージが大きかったけれど、ボロボロの財布のおかげで、3年で金運が無くなるどころか、僕の財産は守ってくれたことになる。

今でもあの時の財布は財布として機能しているし、僕にとってはもうお守りのようなものになっている。あんなことがあったにも関わらず、相変わらず3年で財布を買い替える妻の気持ちが理解できない。妻は妻で、絶対に僕の財布を触りたがらないのだけど。